レポート


なぜ、自転車によるツーリズムなのか

 自転車は、いまや野外レクリエーションの一つだけでなく、環境意識や交通インフラの試金石です。なかでも、自転車を使って旅をする“サイクルツーリズム”は近年急速にその愛好者層が増大しています。彼らのほとんどは、一台10万円以上する本格的なスポーツサイクルにまたがり、体と心に実感のある、個性的で人間性に満ちた旅をしたいと考えているのです。掛川市では、生涯学習の延長線上にあるスローライフ運動の一環として、2002年から自転車を新しい観光や街づくりに取りくみ実験的な活動を続けており、自転車に特化したマップや、鉄道にそのまま自転車を載せて旅するサイクルトレインの実験イベントも実現してきました。
 ヘルメットと専用ウエアに身を包んだサイクリストが、自転車ツーリングイベントに四、五百名以上各地から集結する光景も、静岡県では例年見られる風景となりました。しかし、時代はすでに大規模のイベントから、質的な深さと将来への示唆に満ちたイベントを追求すべき段階を迎えています。

 自転車の旅に熱心な層は、特に四十代から上の年齢層であることも判明しています。まもなく団塊の世代は定年に達することになりますが、そのエネルギーを地域づくりに活かしてゆくためには、自転車によるツーリズムのガイドやボランティアスタッフがひとつの大きな受け皿となるでしょう。さらに、自転車の旅には価値の転換があります。峠道の困難な上りも、逆にそれゆえに自転車の旅人には感動を増幅してくれる素晴らしき舞台であり、都市の名もない静かな裏道も、田舎道でおばあちゃんと交わした会話も、無限と言って良い価値を持ちます。

 畢竟、自転車で愉しめる旅とは、道そのものを主題とする旅にほかならないのであって、その意味でも、古の物流の道であり、同時に信仰の道、秋葉街道であり、文化の伝播する歴史的な道でもあった「南塩の道」を、身体性と精神性と物質文明のバランスした21世紀的な乗り物である“自転車”で旅をする意義は、非常に大きいと確信します。


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